令和6年度名古屋市依存症支援者研修会(アルコール健康障害)メンタルヘルス問題とアルコール~どう気づき、繋ぎ、関わるのか?~

令和6年度名古屋市依存症支援者研修会(アルコール健康障害)が令和6年10月27日、11月17日の両日にわたって行われました。休日の研修にも関わらず足を運んでいただき、ありがとうございました。以下はプログラムになります。

《1日目プログラム(10月27日)》 

10:00~12:00 産業現場におけるアルコール問題~早期発見と初期介入、減酒指導の実際~ 

      (株)ジャパンEAPシステムズ 産業ダイアローグ研究所取締役・顧問医 米沢 宏先生

13:00~14:30 産業分野における保健師の役割~アルコール問題に出会ったときの関わりかた、実際の支援など~  

         三重交通健康保険組合 早川恭子先生(保健師)本田技研工業健康推進室鈴鹿 向井理夏先生(保健師)

14:40~15:40 断酒会について/体験談 

        名古屋連合断酒会 名東・守山断酒会 穴井健一氏、ご家族

15:50~16:20 西山クリニックの取り組み(女性グループなど)

16:30~16:55 名古屋市における依存症問題に関する施策について 

        名古屋市役所健康増進課 村瀬健二先生

 今回は産業関係の講師の方々に来ていただき、各職場でアルコール依存症の人または飲酒が原因で職場で業務や人間関係に躓いている人に対してどのようなアプローチをして介入していくのか。医療に繋げるタイミングや、職場で実施されている飲酒問題の予防啓発などについて講義していただきました。米沢先生の講義では、最初にアルコール依存症についての説明があり、産業医として関わる中で、職場の中でどのように問題飲酒者を発見するのか、飲酒問題について一緒に考えるために、どのような方法で面接に繋げるのか。面接で外してはいけないポイント、発見した場合の職場との連携など非常に具体的な話をして頂きました。面接技法や、面接中に沸き起こる支援者側の気持ちの変化も教えて頂き、すぐにでも実践できる技法を学べた講義でした。

 午後の早川先生、向井先生は実際企業保健師をされており、職場のアルコール依存症の予防教育、啓発活動の実際や、ご自身のなされているアルコールに問題のある方との対応、支援についてそれぞれの立場からお話頂きました。企業の中ではアルコール問題が身近であるながらも、本人も周囲も問題に気が付かず、または軽視しがちなことがあり、介入の困難さを感じました。日頃から、社員の健康を支える一環として飲酒問題を身近な疾病として取り上げ、自分の飲酒について意識してもらう工夫が講演の随所から伺えました。産業保健分野でアルコール依存症の問題があっても、医療機関として連携が難しいのではと感じていましたが、お互いのことを知ることから連携が可能になり、それが依存症を持つ人たちの生活を支えることに繋がると改めて考えさせられました。

 今回は名東・守山断酒会のご本人、ご家族に来て頂き、体験談を語って頂きました。断酒会は、飲酒に問題があると思った本人、家族(病名が付く、つかないは関係なく)が集まり、自分たちの酒害体験を語り、それを聞くというミーティングを通して、断酒を継続していく自助グループです。断酒会は本人、家族が同じ場所でそれぞでれの立場から体験を語ります。最初はお互い話の内容が受け入れがたい面もあると思いますが、話をする、話を聞くうちに本人、家族の大変さ、辛さ、傷つきに気が付いていくことが出来る場です。今回の穴井さんご夫婦にもそれぞれの立場から体験談を語って頂きました。机上で病気について学んでいても、体験談には圧倒されるものがあります。この病気の大変さと根深さとそして回復に向かうとはどういうことかを深く考えさせられました。いつも断酒会の方々には体験談を語っていただき、ご協力感謝申し上げます。

《プログラム2日目(11月17日)》

10:00~11:30 AAについて/AAモデルミーティング 

        名古屋東グループ マナ氏/富士山静岡グループ チカ氏

12:30~14:30 事例検討会(どう気づき、つなぎ、関わるのか?)/グループ検討会

           名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンター大曽根副センター長 石上里美先生(精神保健福祉士)

14:40~15:40 西山クリニックDr&スタッフへのQ&A 西山クリニック院長 西山 仁先生

 2日目は自助グループのAAの方々のミーティングと、事例検討会を行いました。AAはアルコールに問題があると感じた人(病名が付いている、ついていないは関係なく)達が集まり、自らの体験を語る、それを聞くというミーティングを行います。毎回当事者の体験が聞けて、アルコール依存症と言われる人がどんな人なのか、どうして依存症になるまで飲まないといけなかったのかを知ることが出来ると好評です。いつもご協力頂いて、メッセージを運んでくださるAAの方々に感謝申し上げます。今回も、外見からは計り知れない依存症の大変さや飲酒、断酒の苦しさ、辛さ、断酒してからの自分等話していただきました。ご本人の話を聞いて、他人ごとではないと感じられた方も多いのではないかと思います。

 午後からは、事例検討会を行いました。この事例検討会は、事例を解決するのではなくて、グループに分かれて事例から、「自分だったらこうしていたかもしれない」「同じようなことがあった」「こういう時に大変だった」と、自分の支援を思い返してもらい、大変さを分かち合ったり、情報交換をしたりする場です。同じ事例でも他人から見れば視点が異なることもあるでしょうし、所属機関、職種によっても様々です。その中で、人の話を聞きながら自分を振り返ることに、日常では気が付かなった視点や考え方、分かっていたけど方法論が分からなかったということが出てくると思います。グループに参加して出てきた様々な考えや思いを持ち帰っていただくことで、明日からもまあ何とかやっていこうと思えるきっかけになるといいなと思っています。

 最後は、最近の今研修会恒例となっている、「西山クリニックDrへの質問」コーナーです。日頃なかなか聞けないことから、現在困っている事例まで様々な質問に先生が答えていきます。

日頃誰に聞いていいか分からないことや、アルコール依存症の人たちの関わり方のコツなど、一つ一つの質問に答えて頂きました。アルコール依存症と言うと、関わり方が他の疾患の人とは違うかもしれないと思われるかもしれませんが、大きく異なることはありません。それが伝わればいいなと思っています。長丁場の研修でしたが、2日間お疲れ様でした。今後も皆様にとって糧となるような研修を開催出来れば幸いです。ご興味ある方は西山クリニックホームページをご覧ください。